THE GODSEND ~Dedicated to“No One Else”~
この自由が丘ブログでも折りに触れて著してきた想いだが、(大学進学の為に上京して以来)「家族」という存在と縁の無い人生を長く送ってきた私にとって、我が人生の大いなる心の糧である「ジャズ」という一期一会の事象(音楽)を奏でる(歌う)ミュージシャン及びヴォーカリストは特別な存在である。
オン(演奏)で共鳴し合うことによって得る見えない絆。
それを重ねるだけでも既に充分に満たされ、豊かであるのだが、(年齢差を度外視した)畏友とも言える彼等才人達と幸運にもオフ(交遊)でセッションを得て、その人間性をより深く知る時、家族を得ない私にはその一人一人が(言葉に表し切れない程の)確かな質量を持った大切な存在として、我が人生に刻まれていく。
彼や彼女は、私が生きる上での精神的な糧であり、財産。そして、愛しい「家族」そのものである。
その中の一人である女性ヴォーカリスト。
そのファースト・コンタクトは彼女が23歳の頃(現在も20代後半だから、ジャズ界では、まだまだ若手)。
初めて、彼女のパフォーマンス(歌唱)を目の当たりにした際の感慨はいまだ鮮やか。忘れ難い(それは、これから何年経ても、畢生変わるまい)。
以来、彼女のライヴに足を運び、自由が丘のイヴェントにも何度かお付き合いいただき、屋外ワインも楽しんだりして、絆を得てきた。
私よりも遥かにお若いのだけど、畏友であるし、芝蘭の化たる存在である。
ジャズ・ヴォーカリスト、秋元直子さん。
その抜きん出たライヴ・パフォーマンス及び誠実且つチャーミングな御人柄は、(ジャズ・ブログだけでなく)このブログでも度々話題にしてきた。
次代のこの国のジャズを間違いなく担っていく、(天賦の才能のみならず)研鑽を積むことを大いにエンジョイされている、新進気鋭のジャズ・ヴォーカリストである。
一夜一夜、充実のライヴを重ね、(老若男女を問わない)ファンを増やし続けてきた秋元直子さん。
満を持して、初めてのリーダー・アルバム(CD)をこの春に発表となった(4月4日発売)。
正に、リリース(release)。
「解き放つ」の感。
彼女の一期一会の素晴らしいパフォーマンスを体感してきた身にとって、これ程喜ばしい世への解放はない。
東京在住のジャズ・ヴォーカリストの場合、ライヴ活動はどうしても都心や横浜に限られてしまうが、有形であるCDの制作は全国津々浦々の方々にそのパフォーマンスの魅力を認識してもらえる。
是非、聴いてもらいたい。
自信を持って、お勧めしたい。
アルバム名は『No One Else』(MARM-0004/税込\2,000)。勿論、秋元直子名義のリーダー作。
収録曲(全7曲)。
1.Moondance
(作詞&作曲:ヴァン・モリソン)
2.No One Else
(作詞&作曲:秋元直子)
3.I've Got A Crush on you
(作詞:アイラ・ガーシュウィン/作曲:ジョージ・ガーシュウィン)
4.This Masquerade
(作詞&作曲:レオン・ラッセル)
5.センチメンタル
(作詞&作曲:平井堅)
6.あじさい
(作詞:星梨津子/作曲:秋元直子)
7.Fly me to the moon
(作詞&作曲:バート・ハワード)
[5曲目&6曲目は日本語による歌唱]
このバラエティに富んだ選曲は、私のような年季の入ったジャズ者だけでなく、ジャズに縁遠い方、これからジャズを聴こうとしている方にも受け入れられ易いものであろう。
ライヴに足を運んだ老若男女が何故、彼女のパフォーマンス、歌声に魅了されるのか、実感してもらえると思う。
そして、都心に赴いた際には、彼女のライヴを体感してみたいとも強く思うことだろう。
繰り返す。是非、聴いてみて欲しい(1曲目のイカすチューン“Moondance”は、「YouTube」でPVを観ることが出来ます)。
彼女をサポートするメンバーは、都内や横浜のライヴ・シーンではお馴染みの実力派が揃った。
遠藤征志(p)、清水昭好(b)、大村亘(ds)のピアノ・トリオに加え、スペシャル・ゲストに、フルートの井上信平、サックスの松田靖弘、トランペットの類家心平。
強力な布陣。デビュー・アルバムには申し分ない面子(個人的には、「貴公子」遠藤征志さんと重鎮井上信平さんの参加がとても嬉しい)。
それから、畏友でもある敏腕音楽プロデューサー宮住俊介氏が(3曲目のスタンダード・ナンバーで)アレンジャーとして参加していることも特筆しておきたい。
宮住氏と出遭ったのは、80年代末、(この自由が丘ブログ内でも何度か話題にしているが)フランスで料理修業を積んだ友人がグリーンロード沿い(現在の『ヤマダ電機』の近く)で経営していた欧風酒亭『Zio』のカウンターでだった(二人はK大学のビッグバンドの先輩後輩の間柄)。
宮住氏もまた、ジャズ・ヴォーカルの新星秋元直子を何年も見守り続けてきた一人。
私の場合は文章のみの「後追い」だけれども、年上と年下の畏友、才人二御人と共に今回のアルバムに関われたことが何よりも喜ばしい。
秋元直子さんの記念すべき初アルバム『No One Else』のライナーノーツ執筆を担ったことを有り難く、そして、名誉あることと感じている。
これまでも、懇意にしているジャズ・ミュージシャンからフライヤー(アルバムの宣伝)におけるコピー文章(推薦文)やライナーノーツの依頼を受けたことは何度かあったのだが、何れもお断りしてきた。
冒頭に触れたように、彼等は私にとって、あまりにも近しい存在だから。
秋元直子さん御本人からメールで直接依頼を受けた際にも同様の思いで一度はお断りしていた。
が、その返信の文章に決心が揺らいだ。
「私は○○さんの文章が大好きですし、初期の頃から知っていて下さる○○さんに、いつかCDを出す時にはライナーノーツを書いて頂けるのが私の夢でもありました」
ああ、そうだ、そうなのだと思った。
人と人の間には、各々、その当人同士だけにしか解せないような精神的な絆(関係性)というものがあるものだ。
それは、私のこれまでの物書き人生において、私自身が一番実感していたこと。
若き畏友が私の力を望んでくれている。
率直に応えるのが、物書きたる私の在り方であろう。
人には、この世に生を受けた意味、各々の「役割=天賦の才能」があり、それを最大限に活かすことこそが人生(限りある生命)の務めであり、幸福であり、喜び。
そう実感したのである。
まさしく、これこそが(このブログで度々口にしてきた)「感応」そのものではないか。
人様(及びその創造)の想いや兆し(きざし)を感じて応えること。
向けた眼差しの対象が可能性に富んだ次代(後生)及びその萌し(きざし)であるなら、先に生まれている者(先生)の在り方として、尚更のこと。
昨年の師走、録音したばかりの(まだ粗い状態の)素材ディスクを手渡される(因みに、受け取ったのは、私のリクエストにより自由が丘の某カフェで。その店のスイーツを味わってみたかったのだ…)。
その夜は一人で久々に自由が丘のBARに赴いたので、アルコールが抜けた翌朝に繰り返し聴いた。
素晴らしい出来栄えに胸が震えた。
我が心身に潜む感性が一気に活性化した。
自ずとメモ書きに愛用している(ロートレックによる「アリスティード・ブリュアン」がデザインされた)ペンを握り、ライティングデスクに常備している雑記帳(『無印良品』製)に草稿を書いていた。
まだ人様に見せる段階ではないし、指定された期日まで充分に余裕があるし、ヴォーカリスト御本人にきちんと肉筆の仕上がり原稿を手渡したいと思っていた。
が、何度でも繰り返し聴きたくなる彼女の歌声が本当に素晴らしかったものだから、指定の字数を意識しながら推敲せねばならないその草稿をまずは携帯電話のメールで送ることにした(「to gifted NAO」というタイトルを添えて。「ナオ」とは、私自身はそう呼んだことは一度もないのだが、秋元直子さんの愛称)。
かなり気に入ってくれて、すぐに制作サイド(プロデューサー)にも見せたら、彼もまた気に入ってくれたとのことで、ほぼ原文のまま、一発OKと相成った。
私としては、直筆の原稿を彼女に手渡せなかったのは残念だが、秋元直子というジャズ・ヴォーカリストの真摯な生き方を見てきた身としては削りようがない文章でもあったから、ヴォーカリストや制作サイドの判断は正しかったと思う。
そんな私のライナーノーツがメインディッシュのガーニッシュ(というよりは、刺身のツマ)として添えられた秋元直子さんのアルバム『No One Else』、ネット上の私の文章を長い間愛読して下さった皆さんにも御購入していただけたならとても嬉しい(実を言えば、そのライナーノーツはネット上でも読むことが可能なのだが)。
もう一方、専門家(ジャズ評論家)のライナーノーツも収められていますので御安心を。
このブログの最後の最後に、次代を担うジャズ・ヴォーカリストとそのアルバムについて書き表し、終えることが出来るのは何よりの喜びだ。
明日に繋がっていく。
彼女のような天賦の才能を持ち、尚且つ努力を惜しまないこの国の次代の10年後や20年後の活躍をも見届ける為に、健康に留意し、一日でも長くこの与えられた生命の時間を実感し続けていたいと切に思う。
ついでながら、私のささやかな夢は、秋元直子さんに自由が丘の女神まつりの「JAZZ STATION」の舞台に立ってもらい、大人達が熱狂するこのジャズ・イヴェントの「顔」にまでなってくれることだ。
彼女のアルバムやライヴを聴いた方は、是非、嘆願書を(誰に?)。
秋元直子さんの歌声がどういう魅力か、どう素晴らしいのか、私が長々と書くよりは、一聴し、体感していただくのが一番かと思う。
秋元直子さんの公式サイト(「ぽわわ~ん」な御人柄が伝わるブログもあります)。
http://akimotonaoko.com/
○追記
ジャズ・ヴォーカリスト秋元直子さん(及びライヴ・パフォーマンス)の魅力について触れた私のブログ記事(数多)の中からピックアップしてみました。
このブログから2記事、ジャズ・ブログから(初遭遇を含む)2記事。
順序は、あえて、遡る感じで…。
☆to LOVELY SATIN DOLLS/12日
[2011年2月14日付]
http://jiyugaoka.areablog.jp/blog/1000001060/p10365255c.html
☆思い出はひとつの魔法
[2010年5月7日付]
http://jiyugaoka.areablog.jp/blog/1000001060/p10235568c.html
♪秋元直子(vo)+野本晴美(p)&佐藤有介(b) at NARU(代々木)
[2008年1月31日付]
http://dp.tosp.co.jp/index.php?ocd=user&oid=5596&page=4&tno=49&guestAuthCode=&eno=1434&topFlag=&action=blog_view_entry
♪宮住俊介(p)&河野“エディ”秀夫(b) at 学芸大A`TRAIN ~新進気鋭のヴォーカル嬢との遭遇~
[2007年9月1日付]
http://dp.tosp.co.jp/index.php?action=blog_view_entry&ocd=user&oid=5596&eno=1309&tno=42&page=3
我が筆勢(畢生)の随意に。
(2012年4月初旬、筆)
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